はじめに
「もっと認めてほしい」「頑張っているのに評価されない」——こんな気持ちを抱えたことはありませんか?
私も若い頃、承認欲求の強さに振り回されていた時期がありました。上司に褒められると一日中機嫌が良く、少し叱られただけで一日中落ち込む。他人の評価で気持ちが上下する毎日が、じわじわと消耗していきました。
入社10年目のある日、当時の係長から「お前は誰かに認めてもらうために仕事をしているのか、それとも自分のために仕事をしているのか」と問われました。その言葉が、私の仕事への向き合い方を根本から変えるきっかけになりました。
27年間の経験を通じて学んだのは「承認欲求をなくすことはできないが、上手に付き合うことはできる」ということです。この記事では、承認欲求と健全に付き合うための方法をお伝えします。
承認欲求は「悪いもの」ではない
まず大切なことをお伝えします。承認欲求は人間として自然な感情であり、決して悪いものではありません。
心理学者のアブラハム・マズローが提唱した「欲求の5段階説」によると、承認欲求は人間の基本的な欲求のひとつです。他者から認められたい・尊重されたいという気持ちは、誰もが持っている自然な感情です。
問題なのは承認欲求そのものではなく、「承認欲求に支配されること」です。他人の評価が気になりすぎて、本来やりたいことができなくなる・自分の判断より他人の評価を優先してしまう——これが、承認欲求との不健全な付き合い方です。
承認欲求に振り回されていた頃の失敗
入社5年目のころ、私は上司に気に入られることだけを考えて仕事をしていた時期がありました。
上司が好みそうな意見を言う。上司が褒めそうな成果を優先する。本当にチームに必要なことより、上司から評価されることを優先していました。
その結果、チームの同僚から「しんさんは上司の顔色ばかり見ている」と言われたことがあります。その言葉は深く刺さりました。上司からの承認を求めるあまり、同僚との信頼関係を損ねていたのです。
この経験から学んだのは「承認欲求の向け先を間違えると、本当に大切なものを失う」ということです。
承認欲求と上手に付き合う5つの方法
方法①:「自己承認」を先に満たす
他人に承認してもらう前に、まず自分で自分を承認する習慣をつけることが大切です。
私が実践しているのは「今日の自分を労う一言」を毎晩心の中でつぶやくことです。「今日は難しい報告をうまくまとめられた」「部下の相談に丁寧に向き合えた」——他人が気づかないような小さなことでも、自分で認めることが大切です。
自己承認の習慣がつくと、他人からの評価に一喜一憂する頻度が減ってきます。自分の中に「承認の源泉」ができるからです。
方法②:評価される「対象」を広げる
一人の上司・一つの職場だけに承認を求めていると、その評価に過剰に依存してしまいます。評価される対象を広げることで、一つの評価への依存度が下がります。
私の場合、上司からの評価だけでなく「部下から信頼されているか」「取引先から頼られているか」「チームの雰囲気が良くなっているか」という複数の観点で自分を評価するようにしました。
どれか一つの評価が低くても、他の部分で認められていれば精神的なバランスが保てます。
方法③:「結果」より「プロセス」に集中する
結果(評価)は他人が決めるものですが、プロセス(取り組み方)は自分でコントロールできます。
「今日は全力で準備した」「誠実に対応できた」というプロセスへの満足感を大切にすることで、結果への依存度が下がります。
入社20年目ごろ、大きなプロジェクトで自分の提案が採用されなかったことがありました。以前の私なら深く落ち込んでいたはずですが、そのときは「準備は十分にした。プロセスは正しかった」という感覚があり、必要以上に落ち込まずに済みました。
方法④:「承認されなくても大丈夫」という経験を積む
承認欲求が強い人は「認められなかったらどうなるか」という不安を持っています。この不安を和らげる最も効果的な方法は「承認されなくても大丈夫だった」という経験を積み重ねることです。
小さな場面で「承認されなくても気にしない」練習を意識的にすることで、徐々に他人の評価への依存度が下がっていきます。
方法⑤:承認欲求を「エネルギー」に変換する
承認欲求は、うまく使えば強力なモチベーションになります。「認められたい」という気持ちを、行動のエネルギーとして活用するのです。
「この仕事をうまくやれば、上司に認められる」という動機は、短期的には効果的です。ただしこれだけに頼ると疲弊するため、徐々に「自分が成長したい」「チームに貢献したい」という内発的な動機に移行していくことが理想です。
係長になってからの気づき
係長として部下を持つようになってから、承認欲求について新たな気づきがありました。
部下も同じように「認められたい」という気持ちを持っているということです。この気づきが、部下への接し方を変えました。
「よくやってくれた」「あなたのおかげで助かった」——こうした言葉を意識的に伝えるようにしました。小さな成果でも、見逃さずに認めることで、部下のモチベーションが上がり、チーム全体の雰囲気が良くなりました。
承認欲求を自分の問題として扱うだけでなく、「チーム全体の承認欲求をどう満たすか」というマネジメントの視点を持つことが、管理職として重要だと今は感じています。
「評価されない時期」の乗り越え方
どれだけ頑張っても評価されない時期は、誰にでも訪れます。そのような時期をどう乗り越えるかが、長期的なキャリアを左右します。
私が意識してきたのは「評価されない時期こそ、自分の根を深くする時期だ」という考え方です。
木は嵐の日に根を深く張ります。評価されない時期に、基礎を固め、スキルを磨き、人間関係の根を深くする——これが、後から評価されるための土台になります。
入社8年目に昇進を見送られたとき、悔しさと焦りで一時的に仕事への意欲を失いかけました。しかしその時期に、業務改善の記録をつけ始め、数字で成果を示す習慣を身につけました。その積み重ねが、後の係長昇進につながりました。
評価されない時期は無駄ではありません。その時期の過ごし方が、次の評価を決めます。
まとめ
承認欲求と上手に付き合う方法をまとめます。
承認欲求は悪いものではない
- 人間の自然な欲求であり、うまく使えばエネルギーになる
- 問題は承認欲求に「支配されること」
承認欲求と上手に付き合う5つの方法
- 自己承認を先に満たす(今日の自分を労う一言を毎晩つぶやく)
- 評価される対象を広げる(一人の上司だけでなく複数の観点で評価する)
- 結果よりプロセスに集中する(自分でコントロールできる部分に注目する)
- 承認されなくても大丈夫という経験を積む(小さな場面での練習)
- 承認欲求をエネルギーに変換する(内発的な動機へ徐々に移行する)
評価されない時期の乗り越え方
- 評価されない時期こそ根を深くする時期だと捉える
- 基礎を固め・スキルを磨き・人間関係の根を深くする
他人の評価に振り回されず、自分の軸で仕事をする——これが、27年間で辿り着いた「長く・健やかに・誇りを持って働き続ける」ための答えのひとつです。
