【事務職の処世術】27年かけて辿り着いた「嫌われない勇気」より大切な「戦わない技術」

現場の知恵(マインド・仕事術)

4年前、本気で会社を辞めようと思ったことがある。

理由は一つではなかった。人間関係のこじれと、仕事量・仕事の質、両方が重なった時期だった。上司からの要求、現場からの不平、部署間の板挟み。真面目にすべてを正面から受け止めようとした結果、心がすり減っていくのが自分でも分かった。

それでも結局、辞めなかった。家族のためだけに、踏みとどまった。あのとき自分を支えていたのは、根性でも使命感でもなく、ただ「家族のために」という一点だけだったと思う。

27年間、組織という場所で事務職を続けてきて、人間関係の壁は避けて通れないものだと感じている。同時に、あの4年前の経験があってから、人間関係との向き合い方を大きく変えることになった。

真面目な人ほど、正面から受け止めてしまう

上司からの無理な依頼、現場からの不満、部署間の板挟み。これらを一つ一つ真正面から受け止めようとすると、いくら心を持っていても足りなくなる。

真面目な人ほど、この傾向が強い。「自分がちゃんと対応しなければ」という責任感が、逆に自分を追い詰めていく。あの4年前、自分もまさにその状態だった。すべての火種を自分の中で処理しようとして、気づいたら限界を迎えていた。

「戦わない」ことは、逃げることではない

あのときから意識するようになったのが、「戦わない」という選択だ。誤解されやすいが、これは問題から逃げることではない。

理不尽な要求や、感情的なぶつかり合いに、同じ土俵で応戦しないということだ。相手が感情的になっているときに、こちらまで感情で返せば、ぶつかり合いはただ大きくなるだけで、何も解決しない。一歩引いて、相手の言い分の中にある「事実」の部分だけを拾い上げる。感情の部分には反応しない。この線引きを意識するようになってから、無駄に消耗することがかなり減った。

部下の異変に気づけなかった後悔から学んだこと

以前、部下が同僚から陰で辛辣なことを言われていたのに、まったく気づけなかったことがある。結局その部下は休職することになり、復職と休職を繰り返した。あの後悔は今でも消えない。

あのとき強く感じたのは、正面から戦うことだけが誠実さではないということだ。むしろ、相手の様子をよく見て、無理に踏み込まず、でも見捨てもしない、という距離の取り方の方が、時には人を守ることになる。「戦わない技術」は、冷たさとは違う。むしろ、相手をよく観察するための余白を残しておく技術だと思っている。

感情的に叱ってしまった、あの日の教訓

一度、部下を感情的に叱ってしまったことがある。あのときはたまたま部下がついてきてくれたが、これは自分の対応が正しかったからではなく、単に運が良かっただけだと後から気づいた。

感情をぶつけることは、一時的にはすっきりするかもしれないが、長い目で見ると関係を消耗させるだけだ。「戦う」という選択肢を取らないことは、我慢することとは違う。伝えるべきことは伝える。ただ、感情の刃を抜かずに伝える。この違いを意識するようになったのも、あの失敗があったからだ。

未明のトラブル対応で学んだ、耐え方の違い

システム導入のトラブル対応で、未明に呼び出される日々が半年続いたことがある。あのときも、正面から全てを解決しようと気負っていたら、もっと早く潰れていたと思う。

耐えるべきところは耐え、割り切れるところは割り切る。全部に全力でぶつかっていては体が持たない。上司が黙って見ていてくれたことに後から気づいたが、あの上司自身も、きっと同じように力の入れどころを選びながら組織の中で立ち回っていたのだと思う。今でもその上司が、自分にとってのお手本になっている。

傾聴が、戦わないための土台になる

戦わないためには、相手の話をきちんと聴くことが欠かせない。話を遮らず、まず最後まで聴く。それだけで、相手の要求のうち本当に譲れない部分と、実はそうでもない部分が見えてくることが多い。

傾聴を続けてきたことで、指示や交渉がスムーズになったと感じる場面は何度もあった。戦わないというのは、黙って我慢することではなく、相手を理解した上で、無駄な衝突を避ける選択をすることだ。

心を整えるために、線を引く

4年前のあの時期、自分の中で一番効いたのは、「全部を自分が背負わなくていい」と気づいたことだった。

上司の要求も、現場の不満も、部署間の対立も、すべてを自分一人で受け止めて解決しようとする必要はない。持ち帰るべき部分と、受け流していい部分に線を引く。この線引きができるようになってから、以前よりずっと楽に組織の中で立ち回れるようになった。

戦わないことは、弱さではない。27年間、組織の中で働き続けてきて、そう確信している。今日も、誰かの理不尽な一言に出会うかもしれない。そのときは、同じ土俵に乗らず、少し引いた場所から相手を見てみてほしい。案外、それだけで心はずいぶん軽くなる。

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