以前、株主総会のスケジュールを危うく飛ばしかけたことがある。
朝から別の案件で頭がいっぱいで、バタバタとメールの対応から一日を始めてしまった。今日一日の全体像を整理しないまま、目の前の作業に飛びついたのが原因だった。結局、部下からの電話と、たまたま自分がいた場所が近かったことで事なきを得たが、あのときの冷や汗は今でも覚えている。運が良かっただけで、実力で防げたわけではなかった。
あの一件から、始業直後の過ごし方を根本から見直すようになった。今では、朝一番でPCの電源を入れる前に、必ず15分だけ自分のための時間を取っている。
いきなりメールを開くのをやめた
多くの人は、出社してすぐにPCを立ち上げ、メールの受信トレイを開く。だが、これは自分の時間を「他人の都合」に明け渡す行為だと今は思っている。
未読メールの数字に追われるまま返信作業から一日を始めると、その日はずっと誰かからの依頼をこなすだけの、受け身な一日になってしまう。あの株主総会の件も、朝一番からメールの対応に飛びついたことで、頭の中の優先順位が整理されないまま一日が始まってしまったのが原因だった。
まず手を止めて、今日やることを書き出す
今は、カバンを置いて席に着いたら、パソコンより先にノートを開くようにしている。前日の終業時に書き残した「今日の自分へのメモ」を確認し、今日絶対に外せない予定と、優先すべき仕事を3つだけ書き出す。
デジタルのタスク管理ツールも便利だが、始業直後のまだ整理されていない頭には、手で紙に書くという作業の方が効いている気がしている。ペンを動かして文字にすることで、頭の中に散らばっていた予定が、少しずつ形になっていく感覚がある。この数分間があるだけで、あの株主総会のようなヒヤリとする瞬間を、以前よりずっと減らせるようになった。
メールは全部読まなくていい
朝の準備が終わったら、ようやくPCと向き合う。ただし、メールを上から順番に読んでいくことはしない。
まず件名だけをざっと確認し、今日書き出した優先事項に関係があるもの、あるいはすぐに片付くものだけを選んで対応する。残りは一旦後回しにする。午前中という頭が一番働く時間を、他人からの質問への返信だけで使い切ってしまうのはもったいない。時には「今すぐ全部読まない」という判断も、事務職としては必要な技術だと思っている。
焦ることと、急ぐことは違う
あの株主総会の件で一番学んだのは、焦ることと急ぐことは全く別物だということだ。
焦って手をつけると、かえって見落としが増える。急ぐべきときほど、一度立ち止まって全体を見渡す時間を惜しんではいけない。未明のシステムトラブル対応が半年続いた時期も、目の前の作業に闇雲に飛びつくのではなく、優先順位を整理してから動くことで、なんとか乗り切ることができた。
周りの雑音との付き合い方
始業から一時間もすると、オフィスは電話や相談事で騒がしくなる。この雑音に飲み込まれると、せっかく整理した頭の中がまた乱れてしまう。
そういうときは、少しの間だけ意識的に周りとの境界線を引くようにしている。完全に閉じこもるわけではない。急な電話にはもちろん対応するが、自分の中で「今は集中する時間」と決めておくだけで、雑音に振り回される頻度がかなり減る。
道具ではなく、順番を整える
以前は、朝の準備といえば道具を綺麗にすることだと思っていた時期もある。デスクを拭き、ペンを整え、形から入ることに意味を感じていた。
だが本当に効いていたのは、道具そのものではなく「何から手をつけるか」という順番を、頭の中で先に決めておくことだった。どんなに立派な道具を揃えても、優先順位が整理されていなければ、結局は目の前の作業に振り回されてしまう。あの株主総会の一件以来、形よりも中身、つまり頭の整理の方に時間をかけるようになった。
完璧な朝でなくてもいい
もちろん、毎朝きっちり15分を確保できるわけではない。急な電話や、朝一番からのトラブル対応で、そんな余裕がない日もある。
それでも、たとえ3分でも構わない。今日やることを一つだけ書き出す、優先順位を一つだけ決める。完璧な儀式を目指すより、細切れでもいいから続けることの方が、結局は長く効果を持つと感じている。
15分の積み重ねが、信頼を作る
事務職として27年働いてきて、成果を分けるのは特別な能力ではなく、日々どれだけ自分を律して仕事に向き合えるかだと感じている。
朝の15分、頭の中を整理し、今日やることを紙に書く。この小さな習慣の積み重ねが、あの株主総会のようなヒヤリとする瞬間を減らし、結果として周囲からの信頼につながっていったのだと思う。今日も、パソコンを立ち上げる前に、まずノートを開くところから始めたい。

