はじめに
「上司から毎日怒鳴られる」「無視される」「仕事だけ増やされて評価されない」——職場でのハラスメントや嫌がらせは、決して他人事ではありません。
厚生労働省の調査によると、職場でのハラスメントを経験したことがある人は全体の3割以上にのぼります。パワーハラスメント・モラルハラスメント・無視・陰口——様々な形で、多くの人が職場での理不尽な扱いに苦しんでいます。
私自身も、27年間の中で「これはおかしい」と感じる状況に何度か直面しました。また係長として、部下がハラスメントを受けているケースに対処した経験もあります。
この記事では、職場でのいじめ・ハラスメントに遭ったときの具体的な対処法をお伝えします。一人で抱え込まず、正しく対処することが、自分を守る最善の方法です。
「これはハラスメントなのか」を正しく判断する
まず大切なのは「自分が受けていることがハラスメントに該当するか」を正しく判断することです。
パワーハラスメントの定義
厚生労働省によると、パワーハラスメントは以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。
①優越的な関係を背景とした言動 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの ③労働者の就業環境が害されるもの
「厳しい指導」と「ハラスメント」の境界は難しいですが、「人格を否定する言動」「必要以上の長時間の叱責」「業務と関係のない私的なことへの批判」などは、ハラスメントに該当する可能性が高いです。
グレーゾーンの場合
「これはハラスメントなのか、それとも自分が弱いだけなのか」と悩む方も多いです。判断の基準として「自分と同じ立場の多くの人が、同じ扱いを受けて精神的苦痛を感じるか」を考えてみてください。
ハラスメントに遭ったときの5つの対処法
対処法①:記録をつける
最も重要な最初のステップは「記録をつけること」です。
いつ・どこで・誰が・何をしたか・何を言ったか・証人は誰かを、具体的に記録します。日付・時間・場所・発言の内容をできるだけ正確に書き留めてください。
メモ帳でも、スマートフォンのメモアプリでも構いません。記録があることで、後から相談・申告する際に具体的な証拠として使えます。
可能であれば、発言を録音することも有効です。ただし録音については法律上の問題があるケースもあるため、自分が当事者として参加している会話の録音は一般的に問題ありませんが、状況に応じて判断してください。
対処法②:信頼できる人に相談する
一人で抱え込まないことが、精神的な健康を守る上で最も重要です。
社内での相談先
- 人事部・コンプライアンス窓口
- 産業医・相談窓口
- 信頼できる別の上司・先輩
社外での相談先
- 労働基準監督署
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料)
- 法テラス(法的な相談)
私が係長として部下からハラスメントの相談を受けたとき、まず「よく話してくれた」と伝えることを最優先にしました。相談することへの罪悪感を持たせないことが、最初のステップとして重要です。
対処法③:距離を置く
可能な範囲で、ハラスメントをしてくる相手との物理的・心理的な距離を置きます。
席を離す・メールでのやり取りを増やす・必ず第三者がいる場で話すようにする——これらの工夫で、直接的なハラスメントを受ける機会を減らせます。
「距離を置く」ことは逃げではありません。自分を守るための合理的な判断です。
対処法④:会社の相談窓口を使う
多くの企業には、ハラスメントの相談窓口が設置されています。使いにくいと感じる方も多いですが、相談することで会社として対処する義務が生じます。
相談の際は、記録してきた内容を持参し、具体的な事実を伝えることが重要です。「なんとなくつらい」ではなく「〇月〇日に、〇〇という発言を受けた」という具体性が、会社を動かすための重要な要素になります。
対処法⑤:専門機関に相談する
社内での解決が難しい場合は、外部の専門機関に相談することを躊躇わないでください。
都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、無料で相談でき、解決に向けた助言や事業主への指導を行ってくれます。
労働基準監督署には、違法な労働条件や重大なハラスメントについて申告できます。
これらの機関に相談することは、決して大げさではありません。自分の権利を守るための正当な手段です。
「我慢し続ける」ことの危険性
「これくらい我慢しなければ」「自分が弱いだけだ」と思って我慢し続けることは、非常に危険です。
ハラスメントによるストレスは、気づかないうちに心身に深刻なダメージを与えます。睡眠障害・食欲不振・集中力の低下——これらの症状が出始めたら、すでに限界が近いサインです。
27年間の経験で見てきた中で、我慢し続けた結果、うつ病や適応障害を発症して長期休職を余儀なくされた同僚を何人も見てきました。「あのとき早く相談していれば」と後悔する声を、何度も聞きました。
我慢することは美徳ではありません。自分を守ることが、長く働き続けるための最優先事項です。
管理職として「部下のハラスメント」に気づいたら
係長・管理職として、部下がハラスメントを受けていると気づいた場合の対処法もお伝えします。
①見て見ぬふりをしない
「自分には関係ない」「当事者同士の問題だ」と思って放置することは、管理職として許されません。ハラスメントを知りながら放置した場合、管理職も責任を問われる可能性があります。
②被害者の話をまず聞く
「どんな状況だったか」を被害者から丁寧に聞きます。このとき「それはハラスメントじゃない」「あなたにも問題があったのでは」という発言は絶対にしません。
③事実を確認する
被害者の話を聞いた後、可能な範囲で事実を確認します。証人がいれば話を聞き、記録があれば確認します。
④会社の窓口に繋ぐ
個人で解決しようとせず、会社の人事部・コンプライアンス窓口に繋ぐことが管理職の役割です。
まとめ
職場でのハラスメントに遭ったときの対処法をまとめます。
ハラスメントの判断基準
- 優越的な関係を背景とした業務上不必要な言動
- 「自分と同じ立場の多くの人が精神的苦痛を感じるか」で判断
5つの対処法
- 記録をつける(いつ・どこで・誰が・何をしたか)
- 信頼できる人に相談する(一人で抱え込まない)
- 距離を置く(物理的・心理的な距離を作る)
- 会社の相談窓口を使う(具体的な事実を持参する)
- 専門機関に相談する(労働局・労基署は無料で相談できる)
我慢し続けることの危険性
- 心身への深刻なダメージにつながる
- 早期の相談が最善の解決策
自分を守ることを最優先にしてください。あなたが働きやすい環境を求めることは、正当な権利です。27年間の経験から、それを伝えたくてこの記事を書きました。
