今でも悔やんでいる、ある部下のこと
係長として27年間、「部下育成」だけは誰よりも大切にしてきたつもりだった。
仕事の進め方、職場でのコミュニケーション、悩んだときの相談しやすい雰囲気づくり。役付になってから、それだけはずっと意識してきた。だから余計に、あのことが今でも悔やまれる。
ある部下が、同僚から陰で辛辣なことを言われていたようだった。「ようだった」というのが、すでに情けない。私は気づいていなかったのだ。その部下が笑顔で仕事をしているように見えていたのか、それとも自分が見ようとしていなかったのか。
気づいたときには、もう遅かった。
その部下は体調を崩し、休職してしまった。その後も、復職しては再び休職するという負のスパイラルに陥った。私にできることは何もなかった。いや、正確には「何もできなくなってしまった」という表現が正しい。手を差し伸べるタイミングを、完全に逃していた。
悔しかった。管理職として、情けなかった。27年間大切にしてきた「部下育成」が、一番必要な場面でできなかった。その事実は、今でも心のどこかに引っかかっている。
この記事は、そんな経験を持つ私が、ハラスメントや職場のいじめについて書いている。成功談ではない。失敗した側からの、切実な話だ。
職場のいじめは、表に出にくい
あのとき私が気づけなかった理由のひとつは、職場のいじめが非常に見えにくい形で起きていたからだと思っている。
大声で怒鳴る、露骨に無視する、そういうわかりやすいものではなかった。「陰で辛辣なことを言われていた」という、外からは見えない種類のものだった。
職場のいじめやハラスメントには、こういった見えにくいものが多い。
- 本人がいない場所での悪口・陰口
- 必要な情報を共有しない、仲間外れにする
- 表面上は普通に接しながら、裏で孤立させる
- 些細なミスを大げさに責め、自信を失わせる
これらは、管理職でも気づきにくい。被害を受けている本人も、「これはいじめなのか」と確信が持てないまま我慢し続けることが多い。そして気づいたときには、心身ともに限界を超えている。
もし今、あなたが「おかしい」と感じているなら
あのとき、部下が私に一言でも言ってくれていたら、と思うことがある。でも今になってわかる。言えなかったのだ。「言っても変わらないかもしれない」「自分が弱いと思われたくない」「余計にこじれるのが怖い」。そういう気持ちが、声を上げることを妨げる。
だから、もし今あなたが職場で「何かおかしい」と感じているなら、まず伝えたいことがある。
それはあなたのせいではない。
職場のいじめやハラスメントは、受ける側に問題があるのではなく、行う側と、それを許している環境に問題がある。我慢することが美徳でも正解でもない。
具体的にできること
「おかしい」と感じたとき、一人で抱え込まないために動ける選択肢はいくつかある。
記録をつける。 いつ、どこで、誰に、何をされたか・言われたかを日時とともにメモしておく。記憶は曖昧になるが、記録は残る。後になって相談するときの根拠になる。
信頼できる人に話す。 職場の上司、人事、社内の相談窓口。もし社内に頼れる人がいなければ、外部の窓口もある。厚生労働省が設置している「総合労働相談コーナー」は、無料で相談できる。
環境を変えることも選択肢に入れる。 我慢して留まることだけが正解ではない。心身の健康を最優先にすることは、逃げではなく、賢明な判断だ。
管理職の方へ、私の失敗から学んでほしいこと
もし管理職やリーダーとしてこの記事を読んでいるなら、私の失敗を反面教師にしてほしい。
「普通に見える」は安心材料にならない。 私の部下も、表面上は普通に仕事をしているように見えた。笑顔もあった。でも内側では限界だった。定期的に一対一で話す時間を作ること、「何かあれば言える」という空気を日頃から作ること。それが、気づくための唯一の方法だと今は思っている。
早く動けばよかった、は後悔の言葉だ。 「様子を見よう」「大げさかもしれない」と思っているうちに、取り返しのつかないことになる。少しでも違和感を感じたなら、声をかけることを躊躇わないでほしい。
あの部下のことは、今でも気になっている。元気にしているだろうか。あの職場での経験を乗り越えられただろうか。直接確認することはもうできないが、せめてこうして記事に残すことで、同じ思いをする人が少しでも減ればと思っている。
まとめ
職場のいじめやハラスメントは、気づきにくい形で静かに進行する。被害を受けている側は声を上げにくく、管理職でさえ見逃してしまうことがある。
私はかつて、大切な部下を守れなかった。その後悔があるから、今こそ伝えたい。
「おかしい」と思ったときが、動くべきタイミングだ。 一人で我慢しないでほしい。そして管理職の方は、「普通に見える」を信じすぎないでほしい。
職場は、一日の大半を過ごす場所だ。そこが安全でなければ、人は壊れてしまう。私はそれを、取り返しのつかない形で学んだ。
このブログでは、高卒・係長として27年間働いてきたリアルな経験をもとに、キャリアや仕事について書いています。失敗談も含めて、正直に書いていきます。

