「異動」を命じられたとき、どう受け止めるか|27年間で3度の異動を経験した係長の話

キャリアのリアル(高卒・係長の壁)

はじめに

「来月から総務部に異動してもらいます」

入社12年目のある日、上司からその言葉を告げられたとき、正直頭が真っ白になりました。当時の私は営業事務として12年間、ようやく「この仕事なら誰にも負けない」という自信が芽生えてきた時期でした。それを突然、まったく未経験の部署に移れと言われた。

「なぜ自分が」「あと少しで大きな仕事を任せてもらえると思っていたのに」——そんな感情が渦巻いていたことを、今でも覚えています。

27年間で、私は3度の異動を経験しました。そのたびに戸惑い、抵抗感を覚え、しかし結果的にはすべての異動が「今の自分」を作る重要な転機になっていました。

この記事では、異動という体験を通じて学んだこと、そして異動を命じられたときの受け止め方と活かし方をお伝えします。


1度目の異動:営業事務→総務部(入社12年目)

最初の異動は、前述の通り入社12年目のことでした。

総務部での仕事は、それまでの営業事務とは全く違うものでした。社内規程の管理、慶弔対応、備品管理、各種届け出の処理——地味で目立たない仕事が多く、最初の数ヶ月は「こんな仕事をするために会社に入ったわけじゃない」という不満が正直ありました。

転機になったのは、異動から半年が経った頃です。総務の仕事をしているうちに、「会社全体の仕組み」が見えてくるようになりました。各部署がどのように連携しているか、会社のお金の流れがどうなっているか、規程がなぜそうなっているか——これらは、営業事務の仕事だけをしていたら一生知らなかったことでした。

この「会社全体を俯瞰する視点」が、その後の係長昇進に大きく役立ちました。一つの部署の知識だけでなく、会社全体を見渡せる視野を持っていたことが、管理職としての判断力の基盤になったからです。


2度目の異動:総務部→経理部門(入社18年目)

2度目の異動は入社18年目。総務部で6年間働いた後、今度は経理部門への異動でした。

数字を扱う仕事への苦手意識があった私にとって、これは最も不安の大きな異動でした。「数字が得意な人間が行く場所」というイメージがあったからです。

しかし実際に経理の仕事を始めてみると、数字そのものより「数字が示す意味を読む力」の方が重要だと気づきました。そしてその力は、現場での経験が豊富な人間の方が身につけやすい部分があります。「この数字の増減が現場でどういう意味を持つか」を理解できる経験知が、純粋な数字の知識と組み合わさることで、強みになったのです。

この2度目の異動で得た経理の知識は、係長になってからの「数字で提案する力」の直接的な源泉になりました。業務改善の提案を数字で裏付けることができたのも、この時期の経験があったからです。


3度目の異動:経理部門→現在の部署(入社22年目)

3度目の異動は入社22年目。現在の部署への異動で、ここで係長に昇進することになります。

この異動は、前の2回と違い、比較的前向きに受け止めることができました。2度の異動を経て「異動は視野を広げる機会だ」という経験知が積み上がっていたからです。

現在の部署では、それまでの営業事務・総務・経理という3つの経験がすべて活きています。現場の仕事の流れを知っていること(営業事務時代)、会社の仕組みを知っていること(総務時代)、数字で物事を考えられること(経理時代)——この3つの掛け合わせが、係長としての私の強みになっています。


異動で感じた「3つの学び」

学び①:異動は「会社があなたに期待していること」の表れ

異動を命じられるとき、多くの場合「会社がその人に何かを期待しているから」です。左遷に見える異動も、「新しい部署にその人の力が必要だから」という判断であることが少なくありません。

もちろん、すべての異動がそうとは限りません。しかし「なぜ自分が異動させられるのか」という怒りの前に、「会社が私に何を期待しているのか」という問いを持つことで、異動の意味が変わります。

学び②:「今いる場所で最高の仕事をする」という姿勢が次を作る

異動先でも「前の部署の方がよかった」と愚痴を言いながら仕事をする人と、「今いる場所で最高の仕事をする」という姿勢で取り組む人では、2〜3年後のキャリアに大きな差が出ます。

私が3度の異動で一貫して意識してきたのは「この部署に来たからこそ学べることを全部吸収する」という姿勢でした。この姿勢があったからこそ、それぞれの異動が意味のある経験として積み上がっていきました。

学び③:「異動前の人間関係」は財産になる

異動すると、以前の部署の同僚とは仕事上の関わりが減ります。しかしその人間関係は、異動後も大切な財産として残ります。

「あの部署のことは〇〇さんに聞けばわかる」「困ったときはあの人に相談できる」——社内に広いネットワークを持っていることが、係長として仕事を進める上で何度も助けになりました。

異動を経験するたびに、この社内ネットワークが広がっていく。これは、長期勤続者にしか得られない財産のひとつです。


異動を命じられたときの「心の整え方」

まず「感情を認める」

異動の辞令を受けたとき、戸惑いや不満が生じるのは自然なことです。その感情を無理に消そうとせず、「自分は今、残念に思っている」「不安を感じている」と認めることが大切です。

感情を無視して「前向きに考えなければ」と無理をすると、後からじわじわと不満が溜まります。まず感情を認め、受け止めた上で、前を向く。この順番が大切です。

「3ヶ月後の自分」を想像する

異動直後は新しい環境への慣れない感覚で、どうしても辛く感じます。しかし多くの場合、3ヶ月も経てばある程度環境に慣れ、「意外と悪くない」と感じるようになります。

辛い時期は「3ヶ月後の自分はもう慣れているはず」と意識することで、今の辛さを乗り越えやすくなります。

「この異動で何を得るか」を自分で決める

異動先での仕事が始まったとき、「この異動で自分は何を学ぶか」を自分で決めることをお勧めします。会社から与えられた目的ではなく、自分が決めた目的があることで、仕事への主体性が生まれます。

私の場合、総務への異動時は「会社全体の仕組みを理解する」、経理への異動時は「数字で物事を語れる力をつける」という自分なりの目的を設定しました。この目的があることで、辛い時期も「これは目的のために必要な経験だ」と乗り越えることができました。


まとめ

27年間で3度の異動を経験して学んだことをまとめます。

3度の異動の軌跡

  • 1度目(入社12年目)営業事務→総務:会社全体を俯瞰する視点を得た
  • 2度目(入社18年目)総務→経理:数字で物事を考える力を得た
  • 3度目(入社22年目)経理→現在:3つの経験の掛け合わせで係長昇進

異動から得た3つの学び

  • 異動は会社があなたに期待していることの表れである場合が多い
  • 今いる場所で最高の仕事をする姿勢が次のキャリアを作る
  • 異動前の人間関係は社内ネットワークという財産になる

心の整え方

  • まず感情を認めてから前を向く
  • 3ヶ月後の自分を想像して今の辛さを乗り越える
  • 「この異動で何を得るか」を自分で決めて主体性を持つ

異動は、キャリアの「回り道」ではなく「寄り道」です。その寄り道で得た景色が、やがて自分だけの強みになります。27年間の経験から、それを確信しています。

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