システム導入のトラブル対応で、未明に呼び出される日々が半年続いたことがある。
正直、モチベーションなんてものはとっくに底を突いていた。「またか」と思いながら布団から出て、パソコンを開く。やる気があったからやったわけじゃない。ただ、やるしかなかったから体を動かしていただけだ。
でも今振り返ると、あの半年を越えられたのは「モチベーションが戻ったから」じゃない。モチベーションなんて戻らないまま、とにかく手を動かし続けたら、いつの間にか山を越えていた、というのが正直なところだ。
27年間、会社員をやっていれば、やる気が出ない時期は何度もあった。その度に思うのは、モチベーションというのは「上げよう」と気合を入れて上がるものじゃないということだ。
やる気が出てから始めるんじゃない。始めるからやる気が出る
一番大きな勘違いは「モチベーションが上がってから行動する」という順番だと思っていたことだ。
実際は逆だった。未明のトラブル対応のときも、布団の中では「行きたくない」しかなかった。でも現場に着いて、パソコンを開いて、ログを追い始めると、不思議と頭が動き出す。やる気は後からついてきた。
「気が向かないけど、とりあえず5分だけやってみる」。この5分が、重い腰を上げる唯一の方法だと今では知っている。やる気を待っていたら、一生始まらない。
モチベーションは高いままでいなくていい
もう一つの勘違いは「モチベーションは常に高くないといけない」という思い込みだった。
プロの選手だって、毎日絶好調で練習しているわけじゃない。低いなりに続けることの方が、実はよほど価値がある。あの半年、僕のモチベーションはずっと低空飛行だった。それでも毎晩パソコンを開き続けたことが、結果として信頼につながった。上司が見ていてくれたことに気づいたのは、ずっと後のことだ。今でもその上司が、自分にとってのお手本になっている。
誰かの顔が見えると、地味な仕事にも意味が出る
月次集計の仕事は、正直やっていて楽しいものではない。数字を打ち込んで、チェックして、また打ち込む。この繰り返しに嫌気が差した時期もあった。
でも「この数字を見て上司が判断を下す」「この数字が取引先への請求の元になる」——そう考えると、同じ作業でも意味が変わってくる。自分の仕事の先に、必ず誰かがいる。それを意識するようになってから、地味な作業への向き合い方が少し変わった。
部下との飲みの席で気づいたこと
以前、部下と飲みに行ったとき、その部下が自分と同じような悔しさを抱えていることを知った。表には出さないけれど、彼も彼なりに、評価や立場に対するもどかしさを抱えていた。
その話を聞いて感じたのは、モチベーションというのは一人で完結するものじゃないということだ。誰かと本音で話す時間、誰かの頑張りを知る時間が、自分のやる気にも影響してくる。尊敬できる人、頑張っている人の存在は、思っている以上に大きい。
感情的に叱ったあと、たまたま部下がついてきてくれた話
一度、部下を感情的に叱ってしまったことがある。あのときは自分でも「まずかった」と思った。でも、その部下はその後もついてきてくれた。
正直、あれは自分の叱り方が正しかったからじゃない。たまたま、その部下との関係性がそれでも壊れなかっただけだ。この「たまたま」に気づいてから、叱り方を変えた。感情に任せて何かを続けても、モチベーションは長続きしない。冷静に、相手の立場で考える方が、結局は自分自身の仕事へのやる気も保てる。
成長を記録する、という地味な習慣
年に一度、去年の自分と比べて何が変わったかをノートに書き出す習慣がある。
簿記3級を取ったのも、経営の視点で数字を見たいという思いからだった。取った直後は特に何かが変わったわけじゃない。でも一年後に振り返ると、数字の見え方が確実に変わっていた。日々の成長は小さすぎて気づきにくい。だからこそ、書き出して振り返る時間が要る。
休むことは、怠けじゃない
単身赴任の夜、眠れないことがある。家族のこと、会社への不満が頭をよぎって、何も手につかない夜だ。そういうときは、無理に何かをしようとしない。佐世保の港でただ海を眺めたり、させぼバーガーを買って何も考えずに食べたりする。
休むことは、次の全力のための準備だ。無理に踏ん張り続けても、いずれ折れる。そのことを、あの未明のトラブル対応の半年で嫌というほど学んだ。
「評価されるため」から「成長したいから」へ
会社に認められたい、という気持ちで働いていた時期は長かった。でも27年間続けてこられたのは、途中から「自分が成長したい」「チームの役に立ちたい」という気持ちの方が強くなったからだと思う。
評価という外からの動機だけでは、評価されない瞬間に一気に折れる。自分の中から出てくる動機の方が、結局は長く続く。
モチベーションは作るものじゃなくて、育てるものだ。今日、5分だけでいいから、やりたくないことに手をつけてみてほしい。やる気は、そこから追いついてくる。
