組織という場所で27年も事務職を続けていると、避けては通れない壁にぶち当たります。それは「人間関係」です。
上司からの無理難題、現場からの不平不満、そして部署間の板挟み。真面目な人間ほど、そのすべてを正面から受け止めてしまい、心が摩耗し、やがて燃え尽きてしまいます。
かつての私もそうでした。誰からも嫌われないように立ち回り、全ての要望に応えようとして、結局は自分の「こころ」をボロボロにしていた時期があります。
しかし、ある一冊の本との出会い、そして長年の経験を経て、私は一つの結論に達しました。それは、「嫌われない勇気」を持つよりも、「戦わない技術」を磨く方が遥かに重要だということです。
今日は、単身赴任先の佐世保で私が夜な夜な読み返し、精神の支柱としている「こころの整え方」についてお話しします。
「反応しない」という最強の防御
事務職の現場は、感情の吹き溜まりになることが多々あります。 急な依頼に怒り狂う現場の人間、数字のミスを執拗に責める上司。そんな時、相手の感情にまともに付き合っていては、あなたの心はいくらあっても足りません。
私が大切にしているのは、「事象」と「感情」を切り離すことです。
相手が怒っているのは、あなたという人間を否定しているのではなく、単に「困っている」か「余裕がない」だけであることがほとんどです。そこに自分の感情を乗せて反応してはいけません。
「ああ、この人は今、焦っているんだな」と、客観的な事実としてだけ受け止める。 これを私は「感情の合気道」と呼んでいます。相手の攻撃を正面から受けず、すっと横に避けて受け流す。戦わなければ、負けることも、傷つくこともないのです。
座右の銘:長谷部誠『心を整える。』から学んだこと
私が精神的に追い詰められていた時期、救いとなった一冊があります。サッカー元日本代表キャプテン、長谷部誠氏の著書**『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための勝利の方程式』**です。
「プロのアスリートと事務職に何の関係があるんだ?」と思うかもしれません。しかし、この本に書かれていることは、まさに「組織の中で戦う男」のためのバイブルでした。
長谷部氏は言います。「生活のリズムを整えることは、心の安定に直結する」と。 私はこの教えを忠実に守り、どれだけ仕事が忙しくても、どれだけ嫌なことがあっても、夜の30分だけは「自分を整える儀式」を欠かさないようにしました。
お気に入りのマグカップで温かい飲み物を飲み、この本を数ページめくる。 すると、仕事でかき乱された心の澱(おり)が、すーっと沈んでいくのが分かります。
勝利も敗北も、賞賛も批判も、すべては一時的なもの。大切なのは、どんな状況でも「自分自身」であり続けること。この本が教えてくれたのは、組織という荒海で自分を見失わないための「錨(いかり)」の降ろし方でした。
事務職こそ「ルーティン」の鬼になれ
心を整えるために、私は徹底的なルーティン化を推奨しています。 なぜなら、選択肢を減らすことは、脳の疲労を減らし、心の余裕を生むからです。
- 朝、決まった時間にペンを並べる
- 昼休み、決まった場所で読書をする
- 帰宅後、決まった手順で着替える
こうした些細な行動の積み重ねが、「自分の人生を自分でコントロールしている」という感覚を取り戻させてくれます。 27年のキャリアの中で、私が大きなミスをせず、かつ精神を病まずにこれたのは、この「ルーティン」という防壁があったからです。
もしあなたが今、人間関係で悩み、夜も眠れないほど心が乱れているのなら、まずは一つだけ「自分だけの決め事」を作ってみてください。それは「寝る前に必ず本を開く」でも「お気に入りのペンで一日の感謝を一つ書く」でも構いません。
「孤独」は寂しさではなく、自分を磨く砥石である
現在、私は単身赴任で佐世保に身を置いています。 家族と離れ、一人で過ごす夜は、世間一般では「寂しいもの」と映るかもしれません。しかし、私にとってこの時間は、人生で最も「こころが整っている」時間です。
組織のしがらみから解放され、自分自身と対話する。 読みたかった本を読み、自分の考えを整理する。
孤独は、自分を蝕むものではなく、自分を磨き上げる砥石です。この孤独を味方にできた時、人は組織の中でも本当の意味で自立することができます。誰かに依存せず、誰かの評価に振り回されない。「個」としての強さを持つ事務職。それこそが、私の目指す究極の姿です。
まとめ:あなたの「一等星」を見つけよう
人間関係の悩みは、一生尽きないかもしれません。 しかし、自分の中に「これを読めば、これをすれば、元の自分に戻れる」という基準があれば、何も怖くありません。
私にとっての基準は、**『心を整える。』**という一冊の本であり、夜の静かな読書の時間です。
もし、あなたがまだその「基準」を持っていないのなら、ぜひ一度この本を手に取ってみてください。激しい戦いの中に身を置くアスリートが、いかにして冷静さを保ち、自分を律しているのか。その知恵は、必ずあなたの「現場」でも武器になるはずです。
心を整える。それは、自分を大切にするという、最も基本的で最も難しい技術です。 27年目の逆襲。その第一歩は、あなたの心を凪(なぎ)の状態に戻すことから始まります。
さあ、今夜もページをめくりましょう。 明日のあなたが、また穏やかな笑顔でキーボードを叩けるように。
