仕事をしていると、どれだけ注意を払っていても避けられないものがあります。それが「トラブル」です。 納期の間際になって発覚するミス、予期せぬ機材の故障、あるいは理不尽とも思えるクライアントからの仕様変更……。
27年も現場の最前線に身を置いていると、目を覆いたくなるような修羅場を何度も経験してきました。若い頃の私は、トラブルの連絡が入るたびに心臓が跳ね上がり、「終わった……」と絶望し、どうにかして自分の責任を軽く見せようと守りの姿勢に入っていたものです。
しかし、数々の荒波を越えてきた今の私は、トラブルの報告を受けたとき、どこかでこう考えています。 「さて、ここで一気に信頼を稼いでやろうか」と。
今日は、ピンチをチャンスに変え、相手を自分のファンにしてしまう「逆転の仕事術」についてお話しします。
逃げない姿勢が、何よりも雄弁に語る
トラブルが発生したとき、相手(クライアントや上司)が一番見ているのは、実は「ミスの原因」そのものではありません。**「今、この目の前の男が、どういう態度でこの問題に向き合っているか」**という一点です。
多くの人は、トラブルが起きると反射的に自分を防御しようとします。「自分は聞いていなかった」「マニュアルにはこう書いてあった」といった言い訳が口をついて出そうになるものです。しかし、それでは相手の不安と怒りに火を注ぐだけです。
プロとして一番にすべきことは、言い訳を一切捨てて現状を正確に伝え、心からの謝罪をし、即座に「次の一手」を提示することです。 この「逃げない姿勢」を見せるだけで、相手の感情は「怒り」から「期待」へと変化し始めます。「こいつなら、この難局を任せられるかもしれない」という、逆転の土壌ができるのです。
平時の100点より、有事の80点
考えてみてください。普段、100点の仕事を完璧にこなしていても、それは周りからすれば「当たり前のこと」として処理されてしまいます。もちろん、それは素晴らしいことですが、強い印象には残りにくいものです。
しかし、マイナス100点のトラブルが発生し、周囲が絶望しているときに、それを迅速にプラス80点まで引き戻す力を見せたらどうでしょうか。その「復旧力」や「泥臭い献身」を見せつけられた相手は、何事もなかった時よりも強く、あなたのことを信頼するようになります。
「あの時、あいつが動いてくれたから助かった」 その記憶は、平時のどんな完璧な仕事よりも長く相手の心に残り続けます。トラブルを解決した後の絆は、以前よりもずっと強固なものになっているはずです。
「100%を目指さない」余裕が、火消しを可能にする
先日もお話ししましたが、私は仕事において「100%の完璧」を目指しません。常に20%の「遊び(余裕)」を持つようにしています。 なぜなら、トラブルは「必ず起きるもの」だからです。
常に100%の力でギリギリの綱渡りをしている人は、トラブルという突風が吹けば一瞬でバランスを崩し、真っ逆さまに落ちてしまいます。しかし、常に20%の余力を持っている人間は、トラブルが起きた瞬間にそのリソースを全投入し、誰よりも早く火を消し止めることができるのです。
「いつ何が起きても、自分なら対応できる」という心の余裕こそが、現場での最強の武器になります。
信頼は「言葉」ではなく「背中」で稼ぐ
27年のキャリアの中で、私が最も信頼を勝ち取った瞬間を振り返ると、それは決まって「誰かが失敗し、現場が混乱している時」でした。
泥を被り、周囲が嫌がる調整を黙々とこなし、平然とした顔で「次はこうしましょう」と提案する。その背中を見せることで、言葉を尽くすよりも早く「信頼」という報酬が手に入ります。
一度この味を覚えてしまうと、トラブルはもはや恐れる対象ではなく、自分の価値を証明するための「試験」のように思えてくるはずです。
最後に:トラブルの渦中にいるあなたへ
今、まさに予想外のトラブルに直面し、胃が痛い思いをしている人もいるかもしれません。 でも、安心してください。それは、あなたが周囲からの「本当の信頼」を勝ち取れるかどうかの試験を受けているだけなのです。
スマートに仕事をこなすだけがプロではありません。 泥臭く、誠実に、そしてボチボチの余裕を持って立ち向かう。 そんなあなたの姿を、必ず誰かが見ています。
☕️ 立ち止まって考えるための知恵
トラブルの際、焦る心を引き止めてくれるのは、日頃からの「思考の余裕」です。 私がなぜ100%を目指さないのか、その根底にある哲学については、こちらの記事も参考にしてみてください。
🔗 「1発OK」なんて存在しない。私が27年の現場で学んだ「100%を目指さない」仕事術
また、戦場で心を落ち着かせるための「相棒」については、こちらで紹介しています。

