【現場27年のリアル】部下の評価、上との「ズレ」をどう埋めるか。

現場の知恵(マインド・仕事術)

現場を預かる係長にとって、避けては通れない「評価」の季節。 部下一人ひとりの顔を思い浮かべながら評価シートを埋める作業は、実に神経を使うものです。

しかし、私たちが現場の汗を正当に反映させようと努めても、上層部から戻ってくるフィードバックには、時として納得しがたい「ズレ」が生じます。

「なぜ、あいつのあの献身的な動きが評価されないのか」 「この数字だけを見て、彼の半年間を決めつけられてはたまらない」

組織の壁にぶつかり、板挟みになる瞬間。 ここで適当に「上の決定だから」と流すのか、それとも泥臭く抗うのか。 今回は、27年現場に立ち続けてきた私が辿り着いた、「評価のズレ」に対する向き合い方をお話しします。


現場で見る「汗」と、上で見る「数字」の差

まず、なぜズレが起きるのかを、あえてシンプルに考えてみましょう。 それは、**「見ている場所が違うから」**に他なりません。

  • 現場の係長が見ているもの:部下のトラブル対応、後輩へのちょっとした声掛け、不測の事態での踏ん張り。いわば「プロセスの汗」です。
  • 上層部が見ているもの:全体の予算、他部署とのバランス、目に見える実績。いわば「結果の数字」です。

上層部にとって、個々の部下はどうしても「組織のパーツ」として見えてしまうことがあります。しかし、我々係長にとって部下は、毎日顔を合わせ、共に苦労を分かち合う「生身の人間」です。この視点の差が、評価のズレを生みます。

このズレを「仕方のないこと」と諦めるのは簡単です。しかし、そのまま諦めてしまえば、部下は誰を信じて働けばいいのでしょうか。


効率を捨ててでも、「納得」できるまで食い下がる

私は、上層部との評価のすり合わせにおいて、「時間をかけること」を何より大切にしています。

最近は何事も効率化が叫ばれ、会議や打ち合わせは手短に済ませるのが良しとされる風潮があります。しかし、人の評価だけは、効率よく片付けてはいけない。私はそう考えています。

上が「このランクで確定だ」と判を押そうとしても、現場の実感と大きくズレているなら、私は納得いくまで説明に行きます。

  • 「彼は今期、表に見えないところでこれだけトラブルの芽を摘んだ」
  • 「この数字の裏には、これだけのチームへの貢献がある」

一度で伝わらなければ、二度、三度と言葉を尽くします。 なぜ、これほどまでに面倒で時間のかかることをするのか。 それは、「自分自身が腹落ちしていない言葉」で部下に話をすることは、上司として最大の不誠実だと思うからです。


「自分の言葉」という最後の砦

評価はいずれ、部下本人へのフィードバック(面談)という形で行われます。 そのとき、部下は上司の口から出る「言葉の本気度」を敏感に感じ取ります。

もし私が上との調整を適当に済ませ、会社の決定をただ「右から左へ」流すだけの伝言板になってしまったら、部下は一瞬で見抜くでしょう。

「この人は、自分のことを見てくれていない」 「結局、自分はただのコマとして扱われているんだな」

一度失った信頼を取り戻すには、それこそ何年もかかります。 逆に、たとえ望んでいた評価ではなかったとしても、上司が「お前のためにここまで上とやり合ったが、今回はこういう結果になった。しかし、俺はお前のここを評価している」と、自分の言葉で、自分の責任で語ることができれば、部下はまた明日から頑張ろうと思えるはずです。

その「自分の言葉」を捻り出すために、私は上とのやり取りに時間を注ぎ込むのです。


100%の納得より、1%の誠実さを

正直に申し上げれば、27年やってきても、上層部と評価が100%一致することなど一度もありませんでした。それが組織という場所の限界なのかもしれません。

しかし、私は「100%を目指さない」というスタンスを大切にしています。 完全に一致させることは無理でも、昨日より1%だけ、部下にとって誠実な評価に近づける努力はできる。

  • 上と戦って、評価シートの隅に「現場への貢献」を一行書き加えさせる。
  • 次の査定で考慮してもらえるよう、実績を記録に残させる。

その小さな積み重ねが、部下にとっての「救い」になり、私自身の「覚悟」になります。


最後に:係長は「翻訳者」であり「防波堤」であれ

係長の仕事は、単なる中間管理職ではありません。 上の冷徹な論理を現場の温かい言葉に「翻訳」し、上の理不尽な圧力から部下を守る「防波堤」になること。

評価のズレに悩み、上とやり合うのは非常にエネルギーが要ります。 それでも、部下の目を見て、誠実に言葉を届けるために。 自分が納得できるまで、徹底的に対話する。

それが、27年現場で生き抜いてきた私の誇りであり、組織の中で自分を見失わないための「戦術」です。

皆さんも、明日から部下と向き合う際、自分の心から出た「自分の言葉」で語れているか、一度問いかけてみてはいかがでしょうか。

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