一週間の折り返し地点である水曜日。 このあたりで「まだ水曜日か」と重い足取りになるか、「よし、もう水曜日だ」とリズムを維持できるか。その差は、実は仕事のスキル以上に「休み方」の質に現れると私は考えています。
27年、現場の最前線で走り続けてきた私ですが、若い頃は「休むこと=サボること、あるいは弱さの証」だと大きな勘違いをしていました。常に100%の力で動き回り、泥にまみれ、疲れ果てては栄養ドリンクで無理やりエンジンを回す……。そんな日々を送っていましたが、ある時ふと気づいたのです。メンテナンスなしで動き続ける重機がないように、人間もまた、適切なリセットなしには「いい仕事」は続けられないのだと。
今日は、私が現場で何よりも大切にしている、わずか10分の「戦略的休息」について、その深意をお話しします。
スマホという「情報のノイズ」を捨て、五感を解放する
現代の休息において、最大の敵はポケットの中にあるスマホです。 多くの人は、休憩時間になると無意識にスマホを取り出します。メールをチェックし、ニュースを追い、SNSを眺める。しかし、これでは脳は休まるどころか、絶え間ない情報の波に揉まれてさらに疲弊してしまいます。目も指先も、仕事中と同じように酷使されているのです。
私の「戦略的休息」は、まずこの「情報の遮断」から始まります。 現場の喧騒から少しだけ離れ、海風が吹き抜けるいつものベンチに腰を下ろす。そこで行うのは、ただ「風を感じること」と「景色を眺めること」だけです。 潮の香り、肌をなでる風の温度の変化、遠くに見える水平線の青。 意識的に五感を外に向かって解放することで、仕事モードでガチガチに固まっていた脳のスイッチを、一度強制的にオフにするのです。この「何も考えない時間」こそが、脳にとって最高の潤滑油になります。
相棒が運んでくる「儀式」としての時間
この10分間の休息に、欠かせない相棒がいます。私の愛用する「Klean Kanteen(クリーンカンティーン)」のマグカップです。 わざわざ重たいマグを毎日現場に持ち込む理由は、単に保温性が高いからだけではありません。それは、自分自身に対して「今から大切な休息の時間だ」という合図を送るための「儀式の道具」だからです。
コンビニのプラスチックカップや缶コーヒーでは、決して味わえない感覚があります。指先に伝わる適度な重みと、マットな質感の安定感。そのマグから立ち上る湯気を眺め、ゆっくりと一口、コーヒーを運ぶ。 その瞬間、私は「現場責任者」という重たい肩書きを一時的に脱ぎ捨て、ただの「一人の人間」に戻ることができます。お気に入りの道具を使うという小さな贅沢が、わずか10分の休憩を、何物にも代えがたい極上のリラックスタイムに変えてくれるのです。
道具へのこだわりについては、こちらの記事でも詳しく語っています。
🔗私の現場での相棒。Klean Kanteenのライズマグが、ただのコップではない理由
「80%の哲学」をメンテナンスする静かな時間
私が以前の記事でも触れた「100%を目指さない」という仕事術。これを一週間、そして何十年と維持するためには、定期的な心のメンテナンスが不可欠です。 海風に吹かれながら、静かにマグカップを傾けていると、午前中に現場で起きた些細なイライラや、詰まっていた思考の渋滞が、不思議と整理されていくのがわかります。
「あそこの指示は、少し言葉が強すぎたな。午後はもう少し柔らかくフォローしよう」 「あのトラブルも、この大きな海と空に比べれば、実は大したことじゃない」
ベンチに座って自分の状況を俯瞰(ふかん)することで、自分自身を再び「80%の適正な状態」に調律し直す。この10分の「遊び」があるからこそ、午後の現場に再び心の余裕を持って臨むことができるのです。余裕のないリーダーは、現場に無用な緊張を生みます。だからこそ、休むことは「プロとしての義務」なのです。
この「80%で生き抜く」という私の考え方の根幹については、こちらにまとめています。
🔗「1発OK」なんて存在しない。私が27年の現場で学んだ「100%を目指さない」仕事術
27年で見つけた「自分だけのベンチ」
若い頃、私は一度だけ無理がたたって現場で動けなくなったことがあります。その時、先輩から言われた言葉が今でも耳に残っています。「お前が止まったら現場が止まる。だから、お前は止まる練習をしろ」と。
それ以来、私は自分だけの「リセット場所」を探すようになりました。 何も、私のよう海が見えるベンチである必要はありません。ビルの屋上の片隅でも、静かな公園のベンチでも、あるいは車内の閉ざされた空間でもいい。 大切なのは、そこに行けば「自分を取り戻せる」という場所を確保しておくことです。
最後に:あなたは今日、「攻めの休息」を取りましたか?
「忙しくて休む暇なんてない」という言葉をよく耳にします。しかし、忙しい時こそ、あえて立ち止まる勇気を持ってほしいと思います。 10分休むことで、その後の3時間の精度が上がるなら、それは「サボり」ではなく「投資」です。
27年、現場という激しい戦場で生き残ってきた私が保証します。 本当のプロとは、全力で走るスピードを知っているだけでなく、最高のタイミングで「立ち止まる技術」を持っている者のことを指すのです。
明日、あなたも自分だけの相棒を連れて、自分だけの「ベンチ」を探してみませんか。
